| 岡山県地域人権運動連絡協議会 | 全国人権連 |

「飯塚事件」によせて

09年08月11日 yoshioka

足利事件の菅家さんは当時のDNA鑑定によって逮捕され無期懲役囚となったが、そのDNA鑑定が今日の鑑定結果とまったく異なっていたことが証明されて晴れて無罪となったことで、世間一般にそれまで科学的に正確無比と思われていた一時代前のDNA鑑定・科学捜査に疑問の目が集中しはじめた。そんなとき、菅家さんと同じ頃、1992年2月20日、福岡県飯塚市で起きた小学女子児童2人の殺害事件、いわゆる飯塚事件で久間三千年さんは冤罪を叫び続けたまま2008年10月28日、福岡で死刑が執行された。この事件については、8月9日に放映された「ザ・スクープ」でも取上げられいま多くの人たちが、彼は本当に犯人だったのかと疑いの目で司法当局を見ている。菅家さんもこの死刑執行には疑問を持たざるを得ないとコメントを発表している。

なぜ100人中、61番目の死刑囚だった久間さんが変わったばかりの森英介法務大臣の手ですぐに繰り上げ死刑となったのか。そこには繰上げしてまで死刑執行しなくてはならなかった何らかの理由があるはずだ。密室協議で理由は明らかにされなかったものの背景に、当時、科学捜査の決め手として導入したかったDNA鑑定の証拠能力がいかにずさんなものであったかということと、この事件の犯人は久間さんだと断定した警察・検察・裁判所のこれまたずさんな手法が国民の前に明らかになることを恐れたのでないかと疑念を抱かせるものだ。

この事件に衆目が集まるなかで、やはり出てきた証拠となる血液や体液の「全量消費」問題。科学捜査において証拠の全量消費はしてはならないと規範にはっきり定められているが、飯塚事件以外にも仙台北陵クリニック事件などでも同様の問題があるのはなぜか。全量消費した場合、後日、再鑑定を行う際、判定が正しいのか、まちがっていたのか検証できなくなるから、法律に全量消費してはならないとわざわざ明記しているのである。

科学捜査において証拠の全量消費をしたから、「もはや証拠品はない」と警察・検察が主張する場合、そのデータそのものの信用性が失われることは言うまでもないのだが、我が国ではそんないいかんげんな手法がまかり通っているのが現実で、これも世界に例がない。さらに北陵クリニック事件などは裁判所が証拠の開示すらしないという問題まである。5月21日からはじまった裁判員裁判のもとで、いまの司法全体のあり方が本当にまともになるのか疑問だ。

以下のアドレスは飯塚事件について経緯を解説しているサイト。http://gonta13.at.infoseek.co.jp/newpage448.htm

分類・ 弾圧・冤罪 |

コメントをどうぞ

Please note: Comment moderation is enabled and may delay your comment. There is no need to resubmit your comment.