国の「持続化給付金」をもっと使いやすく、充実を
20年06月3日 yoshioka
衆議院での第2次補正予算案の審議が6月17日までとなる中、岡山県人権連は、安倍首相とコロナ担当の西村経済再生大臣に以下の要請を行いました。
内閣総理大臣 安倍晋三 殿
経済再生担当大臣 西村康稔 殿
〒700-0054
岡山市北区下伊福西町1-53
岡山県地域人権運動連絡協議会
議長 中島純男
個人事業主に対する国の持続化給付金に関する
給付条件の緩和と給付上限額引き上げの要請書
新型コロナウイルスの感染拡大にともない国は緊急事態宣言を発出しました。約1ヶ月半続いた外出自粛によって、多くの分野で前年に比べ売上が大幅に減少したことはご承知のとおりです。
そうした中で、国は持続化給付金制度をつくって対応されていますが、この制度では、申請において最初の入り口である前年比50%減か否かで振り分けられ、生活に支障をきたすほど前年よりも収入が落ち込んでいるにもかかわらず、国の持続化給付金を申請できない事業者が多く生まれています。
更に前年比50%以上減少している場合においても、白色申告は前年総収入を12で割り平均額を算出し、それと今年度の減少月を対比させるやり方となっていますが、青色申告の場合は、前年同月と今年同月を対比できる仕組みとなっています。
こうした申告内容によって、申請に差異を設けることなく、更に前年度50%以下の減少の事業者等にも国の持続化給付金を申請できるようにされるべきです。
新型コロナウイルス感染拡大はすべての国民に関係する問題です。こうした点をご理解いただき、第2次補正予算では以下の点について緊急措置をとっていただきますよう強く要請致します。
2020年6月3日
[要請内容]
1. 前年度収入よりも今年度収入が50%以上減少していないと対象とならない国の「持続化給付金」を大幅に見直し、50%以下の減少であっても申請の対象とされたい。
2. 現在の申請では、白色申告は前年総収入を12で割り平均額を算出し、その平均額と今年の減少月の収入額を対比させる仕組みであり、青色申告の場合は、前年同月と今年同月を対比できる仕組みとなっている。白色申告の場合でも青色申告と同様に前年同月対比の方法を認められたい。
3. 申請によっては1円が申請可否を左右する制度上の矛盾をなくすようにされたい。
4. 上記要請1~3を可能とするためにも、第2次補正予算で計上されている予備費10兆円を上限額引き上げと制度拡充に振り向けられたい。
以上
[以下、要請内容をご理解いただくための資料です]
□白色申告と「持続化給付金」制度の矛盾
白色申告者で給付金を申請するとき、前年対象月の収入を前年の年間事業収入を12で割り、月あたりの事業収入平均額を出すことによって算出しています。この算出方式でいきますと、売上の1円の差で多額の給付金がまったく受け取れなくなるなど、制度としての欠陥が指摘されています。
現在の申請基準では平常時の収入が少ない個人事業主など、コロナ禍での売上減少が認められても、申請の基準からは外れてしまうなど、本当に支援を必要とする人に持続化給付金制度が届かないという事態が多発しています。
「誰一人もとりこぼさない」という趣旨から、この制度を早急に見直し、コロナ禍で生活状況が急激に悪化した人の生活が破綻する前に支援が行き届くよう要望します。
□岡山県人権連へ寄せられている市民の声
新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の発出により、事業経営が急速に悪化し廃業に追い込まれる事例が伝えられています。個人事業主の多くはこういった事態を乗り越えるだけの経済的な余力がありません。また、今後も新型コロナウイルスの第2波・第3波の流行も予測されることから、支援の遅れや条件の不備が原因でとりこぼされる人が実際に出ないよう、先を予測した支援の拡充と早急な制度の改善を要望します。
□青色申告の場合でも矛盾が
本制度の支給の条件は、今年の任意の対象月を前年同月と比較し、売上が50%以上減少していることとなっています。ここで、なぜ「前年同月比で50%減」という給付条件にしたのかという疑問が出てきます。前年同月比で50%減少した金額に1円足りないだけで、給付金を受け取ることができません。
収入が低くなるほど、1円の重みは増し、その1円が生活の質を大きく左右します。
持続化給付金の申請の受付が始まり、当初は給付額10万円未満は切り捨てるという制度でした。
しかし、10万円未満の額も切り捨てずに給付するよう改善を強く求める事業者からの声が寄せられたことからもわかるとおり、多くの個人事業主たちは大幅な収入減で大変な状況に置かれています。
100万円を例に
30~40代・一人世帯をモデルとして、岡山市では
生活扶助額は 910,080/年(75,840/月)
生活扶助額と住宅扶助額をあわせると 1,354,080/年(112,840/月)
生活保護の金額から考えたラインが約135万円なので、100万円を支給すればほぼその金額に近づく。
100万円を支給すれば、ほぼ高い確率で「健康で文化的な最低限度の生活」が営めるという理屈?
また、持続化給付金の支給額の計算式を見ると、支給額の上限を100万円と設定して、前年収入額まで回復させるようになっています。
これは「前年収入額まで回復すれば問題ない」との認識から作られた計算式だと思われます。
金額設定の改善には以下のことを考慮することを求めます。
①一昨年(2018年)は、岡山県では西日本豪雨災害の被害に遭い、経済的に大きな打撃がありました。
②前年(2019年)は全国的にも台風による被害が続き、経済的に大きな打撃がありました。
③2019年の10月の消費税増税により家計は打撃を受け、景気は後退しています。
①・②・③のことから…
2017年まで平年を100%とすると、2018年・2019年と相次ぐ災害により、当然個人事業主にも影響がおよび、その収入は減少しているものと思われます。つまり、2019年の収入は平年と比べ、すでに収入が大きく減少しているもので、その収入額に回復できても生活の苦しさは解消されません。
2019年の収入が減少している中で、さらに新型コロナウイルスによる追い打ちをかける大打撃となりました。また、緊急事態宣言の発出により、全国的な打撃となりました。
今回の新型コロナウイルスによる、経済の悪化は毎年続けて起こった災害で生活が圧迫されていたところに、追い打ちをかけたものであり、だからこそこれまでよりも充実した財政支援と迅速な対応を求めます。
【モデルケース1】
前年の収入が生活扶助額を少し上回るあたりの人の場合
生活扶助額910,080円/年 → 75,840円/月
これを少し上回る76,000円/月(912,000円/年)で生活をしていると仮定する。
この場合の、給付条件である前年同月比50%ラインは
38,000円/月となる。
38,000円/月まで売上が減少した場合、
給付金によって、912,000円/年まで回復できるが、
38,001円/月の売上の場合は給付条件の「前年同月比50%以上減少」を満たさず、給付金はない。
売上の1円の差がこの明暗を分け、生活扶助ライン付近で生活をされている人に、
「最低限度の生活」のほぼ半分の金額での生活を強いることになる。
元が生活扶助ライン付近なので、前年売上と比較して少しでも減少していれば生活が困窮することは明らか。
減少率ではない、柔軟な対応が必要です。
【モデルケース2】
前年同月の売上が150,000円/月(1800,000円/年)で、売上減少により生活扶助額を少し下回る場合
生活扶助額75,840円/月(910,080円/年)で
これを下回る75,000円/月の売上となった場合、
給付条件である前年同月比50%のラインに達しているので給付条件を満たし、
給付金によって1800,000円/年まで回復できるが、
75,001円/月の売上の場合は給付条件の「前年同月比50以上減少」を満たさず、給付金はない。
75,001円/月では生活扶助額の75,840円/月より低く、「最低限度の生活」以下の生活を強いられる。
【モデルケース3】
前年収入が2,000,000円の人の場合、
給付の条件は「任意の対象月の収入が前年同月比で50%以上減少」
50%減少した人の場合
白色申告者の場合、前年の月間収入は前年収入を12で割った平均額とされているので、
2,000,000/12 が前年月間収入となる
対象月の売上が50%減少した場合、
2,000,000×0.5/12 が対象月の売上となる
給付額の計算式にあてはめると
給付額=前年売上-対象月売上x12
=2,000,000-2,000,000×0.5/12×12
=2,000,000-1,000,000
=1,000,000
となり、1,000,000円が給付額となる。
前年収入が2,000,000円で対象月が売上が50%減少した人は、給付金によって前年と同じ収入まで回復可能となっている。
一方、減少率が50%に届かなかった場合、前年収入が2,000,000円の場合、月の売上の50%ラインは83,333円/月となる。
このラインに1円届かない83,334円/月の場合、給付の条件を満たしていないので、給付金はない。
50%減少した人は
1,000,000+1,000,000(給付金)=2,000,000
50%減少した額に1円届かなかった人は
1,000,000+0(給付金なし)=1,000,000
このように前年収入が2,000,000円の人の場合で、対象月の売上が1円違うだけで1,000,000円の差です。
1円の売上の違いで、1,000,000円の給付が受けられる人と受けられない人が分かれてしまいます。
これは制度上の欠陥だと思われます。
以上の3つのモデルケースから、現在の給付条件ではこの間の売上減少による個人事業主の生活困窮の解消にはならず、一刻も早い給付条件の緩和と支給金額の引き上げを求めまたものです。