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第3次晴れの国おかやま生き活きプラン素案に対するパブリックコメント

20年12月12日 yoshioka

岡山県から第3次「生き活きプラン素案」に対するパブコメ募集が行われました。岡山県人権連からは以下のパブコメを12月11日に提出しました。このプラン素案は、県政の最上位に位置づけられているといわれているものです。それだけに問題点もいろいろと見られます。

3次晴れの国おかやま生き活きプラン素案に対するパブリックコメント

 

20201211

岡山県地域人権運動連絡協議会

議長 中島純男

 

[全体を通して]

 本プラン素案は、第1章基本的な考え方、2プラン性格において、「県政の最上位に位置づけられている総合的な計画」だと述べているが、そうであるならば、岡山県として策定している様々な指針(例えば人権政策推進指針等)との関係性等について触れられていないのは何故か。

後段の重点戦略では、主に2040年段階を見据えた戦略的目標として形成されており、憲法が保障する基本的人権をどう保障していくのか、県民の生活や生命にかかわる福祉や社会保障に関する制度の充実に向けた考え方等は見られない。

 併せて、2040年を見据えた現在の岡山県の姿に基づく推計と、重点戦略Ⅱ、Ⅲで述べられている目標としているところのギャップが大きいが、そのギャップを埋めていくための道筋ともいうべき県政の施策の強化や考え方が本プラン素案から見えてこない。このままでは、現状はこうだが、目標としてはこうだという入口と出口のことしかなく、年次計画はみえてこないが、この点について県はどう考えているのか疑問である。

 

1章 基本的な考え方

3 プラン推進の基本姿勢として、「顧客重視」「コスト意識」「スピード感」という3つの視点をもって市町村との連携・協働を基調としていくとあるが、ここでいう「顧客重視」「コスト意識」とは、もっぱら商業分野で使用される用語であり、行政が掲げるべき視点としては不適当である。県は、このプランにおいて県民を「客体」として位置付けているのは誤りである。県政が県民に対して丁寧に対応するということと、ここに掲げる「顧客重視」「コスト意識」というのは、あきらかに違う。

 「顧客重視」「コスト意識」という本プランの視点は、大企業誘致や水島コンビナート等への億単位の予算を確保する一方で、財政に余裕がないことを理由に福祉や社会保障関連予算を削減している(特徴的に表れているのは、単県公費医療費補助制度の予算削減を元に戻さないまま今に至っている)今の県政に特徴的に表れている。

では、企業誘致や水島コンビナートへの補助金は、費用対効果に照らしてみた場合、つりあっているかいえばそうとも思えない。実態は大規模な人員削減をした大企業に数億円の補助金を出す等、数百人が職を失う原因をつくった特定の企業へ巨額の県費を投入するわけであるし、そうした企業が新たに百数十人程度の雇用を打ち出しても、あまりに失うものが大きく、到底、県費投入の効果が得られたとはいえない。

本来、行政とは、たとえ費用がある程度かかろうとも県民や地域活性化にとって不可欠な事業であれば、県議会の承認を得て施策を実施する役割があるのではないか。そうした点が抜け落ちているように思える。

 

2章 長期構想(岡山の将来像)

1 2040年頃を見据えた変化と課題(1)本格的な人口減少・長寿社会の到来 

 「教育県岡山の復活」には、AIやロボット、ビックデータといった情報技術を基礎とした人材の育成が重要だと述べているが、これらは企業が求める人材を公教育において育成するというもので、本来、公教育が担うべき児童生徒に教育力を身につけさせることを目的とした教育政策とは相反する。

児童生徒の基礎学力の向上や豊かな人間性の育成こそが重要であり、そのためには、今回の新型コロナウイルス感染拡大で明らかになったように、少人数学級の導入や正規教員の数を増やして、教師がゆとりを持って児童生徒と向き合える時間をつくる必要があるが、プランには、そうした視点は見られない。

 「地域を支える産業の振興」を取り巻く変化と課題については、働く意欲のある人の能力を伸ばすことは重要だが、プランが示すように人生100年時代に入ろうとする中で、県政が現に医療や福祉、社会保障を充実させる施策を推し進めている中でそうしていくというのなら理解できるが、今の県政は医療や福祉、社会保障関連費をできるだけ引き下げようとしているのではないか。

農業分野においても本プラン素案で述べられているのは、ブランド化と商品価値の高い果物等を海外に輸出し攻めの農業を推進するというものであるが、いま海外の巨大農業メーカーに種子や農薬の権利が集中し大きな問題になっているが、日本においても種子法が廃止され岡山県では優良品種を守る要項がつくられているものの、十分とは言えず、2040年段階で農業を取り巻く法律や環境が現在より更に厳しさを増していることは否めない。こうした視点がプランから欠落している。

大規模災害や新型コロナウイルス等、新たな感染症による県民の生命・財産、住んでいる地域を守る上で、自助と共助があまりに重視されており、県として果たすべき公助の視点がすっぽりと抜け落ちている。大規模災害等が発生した場合、国や県、自治体が公助として、国民、県民、市民のために全力で頑張るという姿勢が見いだせない。

 

2 岡山の個性と優位性

(2)温暖な気候に恵まれた「晴れの国」

 県は、この間「晴れの国」を対外的な謳い文句にしている。確かに降水量が比較的に少なく、晴れの日が多いが、この間、西日本豪雨や大型台風被害、更に局地的なゲリラ豪雨の発生等を経験してくる中で、「晴れの国」の優位性を相変わらず強調できるかは疑問である。客観的なデータを基にした記述であるから、大きな誤りではないものの、記述に工夫が必要ではないか。

(9)福祉の伝統と地域活動等の先進性

 確かに記述されているように福祉の伝統と地域活動の先進性はあるが、県政がこうした福祉・社会保障といった分野や地域活動をどう応援してきたのか疑問が残る。このままの書きぶりとするならば、重点戦略の部分に県政がこの分野でどう向き合っていくのか記述が必要ではないか。

 

重点戦略Ⅱ 地域を支える産業の振興

2 企業の「稼ぐ力」強化プログラム

 確かに県内企業の99.8%は中小企業・小規模事業者であるが、課題として取り上げているAIIoTEVシフトへの適切な対応、施策の方向性で述べられているデジタル化等は、ある程度力を持っている、若い後継人材等がいる事業者には可能かもしれないが、高齢化、斜陽化が進んでいる事業者にとっては困難性がある。「稼ぐ力」は大切ではあるが、「稼ぐ」ことが困難な事業所を県政がどう応援していくのかがもっと重要ではないか。

 このままでは、「稼げない企業」は応援しないとも受け取られかねない。

 

4 儲かる農林水産業加速化プログラム

 県内消費よりも述べられているのは、県外や海外への輸出のことが取り上げられているが、本来、国内の食糧自給率は現在でも39%程度であり、いまの農業政策が続くと2040年頃にはもっと低くなっていることが推測されるが、そうした中で、担い手育成とともに農地の集積・集約化を推進するというが、中山間地等の多い岡山で遠くにある飛び地のような農地をいくら集積して書面上の面積を大きくしても十分な費用対効果は得られない。

 ヨーロッパでは、いまは、家に近いところにある農地経営を家族で営むことの方が有利だと言われている。農業に対する政策を根本的に考え直す時期に来ていると考えるが。

 ここでも「儲からない農林水産業」へは支援しないようにも受け取られかねない。

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