弁護士ゼロワン問題と新見のことを検証する
11年01月11日 yoshioka
NHK岡山放送のニュースで、新見市に2人目の常駐弁護士が決まったと報じていたのを聴いて、そういえば新見市と真庭市には長らく弁護士事務所がなく、相談者が困っていたことを思い出した。真庭市には4月から公設事務所が開設。
弁護士ゼロの新見市が一人の常駐弁護士のおかげで、「ゼロ地帯」から抜け出したのは、まだつい最近のこと。「弁護士ゼロワン」とは、弁護士がいない「ゼロ」、もしくは一人しかいない「ワン」という弁護士偏在問題である。
日弁連によると、現在、日本全国で弁護士のゼロ地帯は無いというものの、「ワン」と呼ばれる1人の弁護士しかいない地帯もいまだに4ヶ所あるという。その一つが中国地方では岡山地方裁判所新見支部であり、対象地域となっているのが新見市である。地元メディアの大手である山陽新聞の2月11日付け社説にもこのことについて述べられていたが、県北である新見や真庭などは、なかなか県政など政治の光が当たりにくい地域であり、その影響は各分野に及んでいる。
日弁連のHPによると、「弁護士1人当たりの人口が3万人を超えるような地域を、特別に対策が必要な地域(弁護士偏在解消対策地区)として定め、2013年を目処に解消することを目指しています。2010年12月1日現在、弁護士一人当たりの人口が3万人を超える地方裁判所支部は93か所あります」とある。
93か所のうちの一つが新見市である。60歳以上の高齢者比率の高い「限界集落」の件でも新見を中心とした県北部が全国ワーストワンであることは、以前のブログでも掲載したとおりだ。明治から昭和50年代まで「石灰」と「木材」の搬出と関連産業の発展でにぎわった新見は、鉄道ファンならだれもが知っているD51型機関車(通称デコイチ)3両を連結した貨物列車の力強く迫力ある写真で全国的に有名であったように、国鉄全盛期には貨物取扱高では岡山駅をしのぐほどの収益率をあげ、「機関区」「保線区」も有する地域として栄えた。
その新見市も国の林業政策の衰退に続き、鉄の需要の減退で「石灰」を中心に地場産業も大きく衰退していった。農業や林業も兼業が多く、農林業一本で生活している家はほとんどみられない。その担い手も60歳代が若い方という状態だ。
合併を繰り返しても、その都度地域の学校を統廃合し地域が衰退するので、人口減少に歯止めがかからない県北部の新見市。司法の点からみても様々な困難性をもつ地であることを改めて認識した「弁護士ゼロワン」問題。