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ペシャワール会、伊藤和也さん安らかに

08年08月28日 yoshioka

アフガニスタンで非政府組織(NGO)「ペシャワール会」の伊藤和也さん(31)が拉致され、遺体で発見された事件は、国際援助のあり方がいかに難しいかを私たちに知らしめた。拉致当初から情報が錯綜するなか結果的に一番恐れていたことが起きた。現地ペシャワール会代表の中村哲医師は、現地の情勢悪化を甘く見ていた自分に非があると述べ、亡き伊藤さんの遺志を継いでプロジェクトは遂行すると記者団に語った。

伊藤さんは拉致された数時間後には、犯人追撃の現地住民や治安部隊との銃撃戦の最中、足手まといになったから射殺されたのではないかと見られている一方、銃撃戦の巻き添えになったとの見方もあり、やはり情報が錯綜している。

ペシャワール会代表の中村哲医師は、帰国するたびに全国各地で会の活動の現状や現地の人たちの生活実態を報告講演してきた。岡山でも何度も講演会が行われ、私もそのつど講演を聴きにいった。国境なき医師団、アムダ、そしてペシャワール会、そのいずれも活動に特徴があるが、なかでもペシャワール会は、誰もが行きたがらない山奥の小さな村々をまわり政府からの援助もない中で黙々と活動をしてきた。NHKでも数度、そういった活動がドキュメンタリーとして取り上げられたことを思い出す。また、先のアメリカ同時多発テロからはじまったアフガン攻撃の最中も撤退せずそこに留まり、医療活動や農業活動、治水活動を休むことなく現地住民と一緒になってやってきた。今回殺害された伊藤さんは、31歳と若いが、そんな農業分野での指導者の一人だったという。

伊藤さんが拉致され殺害されたことで、遺族や会のメンバーは大きな悲しみの中にいる。そして、現地で共に生活し指導を受けながら灌漑用水路の建設や作物栽培技術を習っていた人たちをはじめとする現地アフガンの人々も、今回の出来事に困惑しているという。政治的な背景ではなく、物取りなのかもしれないという見方もある。真相はいまだ闇の中だが、いまはただ亡くなった伊藤さんのご冥福を祈りたい。

★以下は伊藤さんがペシャワール会に提出していた「志望書」が27日に公開された全文。

 ワーカー志望の動機 伊藤和也

 私がワーカーを志望した動機は、アフガニスタンに行き、私ができることをやりたい、そう思ったからです。

 私が、アフガニスタンという国を知ったのは、2001年の9・11同時多発テロに対するアメリカの報復爆撃によってです。

 その時まで、周辺国であるパキスタンやイランといった国は知っているのに、アフガニスタンという国を全く知りませんでした。

 「アフガニスタンは、忘れさられた国である」

 この言葉は、私がペシャワール会を知る前から入会している「カレーズの会」の理事長であり、アフガニスタン人でもある医師のレシャード・カレッド先生が言われたことです。今ならうなずけます。

 私がなぜアフガニスタンに関心を持つようになったのか。

 それは、アフガニスタンの復興に関係するニュースが流れている時に見た農業支援という言葉からです。

 このこと以降、アフガニスタンに対しての興味を持ち、「風の学校」の設立者である中田正一先生の番組、偶然新聞で見つけたカレーズの会の活動、そして、カレーズの会の活動に参加している時に見せてもらったペシャワール会の会報とその活動をテーマにしたマンガ、それらを通して現地にいきたい気持ちが、強くなりました。

 私は、関心がないことには、まったくと言っていいほど反応しない性格です。

 反応したとしても、すぐに、忘れてしまうか、流してしまいます。その反面、関心を持ったことはとことんやってみたい、やらなければ気がすまないといった面があり、今回は、後者です。

 私の現在の力量を判断すると、語学は、はっきりいってダメです。農業の分野に関しても、経験・知識ともに不足していることは否定できません。ただ私は、現地の人たちと一緒に成長していきたいと考えています。

 私が目指していること、アフガニスタンを本来あるべき緑豊かな国に、戻すことをお手伝いしたいということです。これは2年や3年で出来ることではありません。

 子どもたちが将来、食料のことで困ることのない環境に少しでも近づけることができるよう、力になれればと考えています。

 甘い考えかもしれないし、行ったとしても現地の厳しい環境に耐えられるのかどうかもわかりません。

 しかし、現地に行かなければ、何も始まらない。

 そう考えて、今回、日本人ワーカーを希望しました。

2003・6・15

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